2013年2月8日金曜日

中国のロッカーたちは何も考えていない。

このあいだ、台湾ビッグイシューのイベントを應典院で開催して、無事終了してから片付けているときに飄々と会場に現れた外国人がいた。トレバーという名前のニューシカゴ出身の彼は、現在某大学で音の研究をしているらしい。音の研究とざっくり説明したけれど、非常に興味深いことをやっているみたいなのだがなんと説明していいのか、また彼が英語でなんと説明していたか忘れてしまったので、音の研究、という曖昧な言葉で置き換える。

彼はトランペットでノイズ音をぶっ放しているようで、会ってから数日後、彼のsoundcloudを教えてもらい聴いてみると、驚いた。温和で服装もきっちりとしている彼がまさかハーシュノイズな人だと思っていなかったからだ。てっきりアンビエント系というジャンルに属するようなノイズをやっているんだと思っていた。

殺人系ノイズ、轟音ノイズ、インダストリアルノイズなどに異様に反応してしまう私は、そこから一気に、トレバーに親近感を抱いた。ああ、やっと友達ができた気がする!と。こういう趣味を共有できる友達は本当にいないので。そしてトレバーも、すでに私がOffshoreで書いている台湾の失聲祭やノイズ系情報に非常に興味を持ってくれていたらしく、「中国のノイズもかなり気になってるよ!」と言わせることができて、こんな小さなことだが「ああ、Offshoreやって良かったな」としみじみした。

また数日後、トレバーからfacebookでメッセージが来た。
「こないだおすすめしてくれたパララックスレコーズに行ってきてこの2作品気になったんだけど、見たことある?」と。
その2作品とは、SUB ROSAから出たDVD『FUCK YOU』と、同じくSUB ROSAから出た『ANTHOLOGY OF CHINESE EXPERIMENTAL』

どちらも中華系ノイズを知るには絶品で、今となってはすでに古いのだが、入り口として通るべき道だ。
トレバーには「もちろん見たことあるし、どちらも持ってるよ!」と返す。と同時にこんな話をした。

どちらも、ノイズ界の先生、ポーランド出身東京在住のズビグニエフ・カルコフスキーさんが監修しているようなのだが、特にFUCK YOUは面白い。これはまったくカルコフスキーさんを笑っているわけではないのだが、なんとも滑稽なのだ。

TORTURING NURSEやDICKSON DEEなどが出演している。前半のパートは、どのアーティストだったか忘れたが、インタビューにおいて「私は反体制の精神を持ってやっています」というようなことが明らかに述べられる。だが、その雰囲気を後半でTORTURING NURSEなど若いノイズミュージシャンたちが叩き潰す。「政府がどうとかまったく関係ない。自分がノイズ出したいからやってるだけ。」と、さっぱり。きっぱり彼らはそう言っていたが、インタビュアーチームやカルコフスキーさんは「しかしこの裏には……」みたいな期待を乗せているような風潮でこの映像は終わっていく。
それに対して私は妙に納得したのだ。

今まで、中国大陸のアーティストにインタビューを取っても、「そうだ、政府に抵抗するために表現している」なんて言う奴はいなかった。今ならこう思う。もしそう断言した人がいたなら、私はそのアーティストをダサいと思っていただろう。

CARSICK CARSの「中南海」という曲には、中南海=中国共産党本部なので裏のメッセージが隠されている、とする予測もあり、それもそれで面白そうだし私は直接CARSICK CARSに会って確認したわけではないけれど、今ならこう思う。なんにも考えてない。彼らは。単に中南海タバコ見て思いついたから歌詞にしただけ、ではないだろうか。

写真家223も、見事に私の「中国にいたら表現することって大変じゃないの?」という問いに否定した。別に不自由は感じないよ?考え過ぎじゃないの?といった具合に。

中国にいない私たちは、勃興する中国のロックや創作活動に期待を抱き、彼らは何かを変えようとしているんじゃないかと勝手に憶測する。だがその一方で経済も発展しており、国の情報統制うんぬんだけの話ではなく、やっと、みんながインディー音楽やアートを身近に感じられるようになった時代がこの10年ぐらいなんだろう。

表向き「自由」な私たちは、自由でないとされる国の人々に自由の良さを押しつけたがる。自由と言う言葉の定義も知らぬまま、「自由っていいんだぜ」と言いふらす。
約2年間、日本以外のアジアを見つめてきて、やっと今出た答えだ。中国のアーティストやインディーズのロッカーたちは、自分たちが自由だとか自由でないとか考えることよりも、かき鳴らしたいんだと。自分の表現を、自分の音を、世に出して見せて快感を得たい。それだけなんじゃないだろうか。
そして、そこに究極の自由を感じる気もするし、それに、よくよく考えてみれば、別に中国だからってできることが限られているわけでもない。確かに北京では多数コピーをするのはダメだとか細かいルールはいろいろあるらしいのだが、北京でダメなら広州に行け、と言った具合に抜け道はいくらでもあるし、写真の展示でヌードがダメだというわけでもないらしいし、あからさまに政府を攻撃しなければ政府からお咎めが入るなんてないらしいし、自由じゃないか。

何も考えていないけれど彼らはうまいやり方を知っているし、ある程度規制がある分知恵を働かせて自分を守る術を知っているように見える。そこに、なんだか、自分に対してのガマンや規制を強いない自由度を感じる。やるなら思いっきりやれ。中国のインディーシーンにいる彼らは思いっきりやることを思いっきり楽しんでいて、いちいち政府に歯向かっているヒマもなさそうで、これがまた私にはかっこよく見えてしまうのだ。

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